記事一覧(バックナンバー)

時間の不思議な性質

3.時間の不思議な性質

具体的な時間の使い方の話に入る前に、まず時間の不思議な性質について考えてみましょう。

誰もが「あたりまえ」と思っていることですが、時間のことをよくよく考えてみるととても不思議でミステリアスなのです。

時間というものについては、これまで人類があれこれ考え、悩んだり、苦しんだりしてきました。そして、「喜び」や「悲しみ」を生み出し、多くの物語や劇、映画、歌、詩などの芸術にもなっているくらい身近なものなのです。

とても身近なものなのに、なかなか自由にならないのが「時間」です。これからあなたは自分や家族の幸せのためにこの不思議な時間と向き合っていかなければなりません。

では何が不思議なのか、一つ一つその性質について考えていきましょう。

(1)時間は誰にでも平等…「いつでも」「どこでも」「誰にでも」物理的な時間は一緒

忙しい人がいたり、暇な人がいたり、「時間はみんなに平等じゃない」と思うかも知れませんが、単純に物理的な時間ととらえると、1日、24時間、1440分、86400秒は誰にでも平等に与えられているものであり、どこにいても、どんな状況でも平等に与えられています。

仕事中でも休日でも、旅行中でも、(あるいは冒険中、洞窟に閉じ込められていても、大空を飛んでいても、草原を自由に駆け巡っていても、)病気でも、元気でも、大人でも、子どもでも平等です。

つまり「持ち時間」は一緒なのです。その日がくれば、そして生きてさえいれば「1440分」が自動的に与えられます。

たとえば1日1440円の給料やお小遣いをもらってどう使うかを考えるようなものです。その中から税金分として、睡眠、食事、身支度、風呂、トイレなどの生活時間、仕事、家事、育児、通勤などのワーク時間が差し引かれ、それを除いた時間から家族との時間や個人の時間を捻出していくことになります。

1日のうち使える「可処分所得」は人により、状況により違うので、それを工夫するために使うのが時間術なのです。いかに使える時間を増やしていくか、そしてその時間を有効に使うかが大切になってきます。

ただし、困ったことにこの1440分の時間は翌日に繰り越しがきかないという性質を持っています。積極的に使わなくても「自動引き落とし」のように刻一刻と差し引かれていくのです。

ですから、「1日の持ち時間は1440分である」と強く意識してください。

また感覚として、1日を「24時間」と考えると10分がたいしたことないように感じますが、「1440分」と考えると同じ10分でも貴重な時間に感じられ、自然と大切に使うようになるので、今まで「1日は24時間」と意識していたと思いますが「1440分」と考えるようにしましょう。

自分の時間の感覚や目盛りを少し動かしていくと、時間の流れに敏感になり、より時間に注意が向くことによって、もっと時間が大切に思えてくるのです。

たとえば朝6時に起きる人は、6時間分、つまり360分、さらに言い換えれば1440円のうち360円分をすでに差し引かれているということになります。たいへんなことですよね。

休みの日の朝、あなたは何時に起きていますか。朝寝坊をしていませんか。時々起きたらもうお昼なんてことはありませんか。

時間はだれにでも平等に与えられますが、繰り越すことはできません。

(2)時間の流れは元に戻らない…流れてしまった時間は戻らない

これも今私たちの生きている世界ではあたりまえのことですが、時間を使っていく上では強く意識しておくべき大切な性質です。

映画や物語の世界によくある「タイムマシンで戻って…」などというSF的なことではなく、「やり直せない」「元には戻らない」という意味でとらえてください。

言い換えれば時間は「ワンチャンス」という意識を持っていただければと思います。

ゲームではリセットボタンを押したり、セーブしたところからやり直ししたりできますが、現実の世界ではそうはいきません。タイムマシンやゲームのリセットボタンのことを考えるより、その時その時を真剣勝負していくことをおすすめします。

そして「やり直せばいいや」「また今度でいいや」と思っていると、結局取り組み方が甘くなり、よい結果に結びつかないのです。それよりも限られた時間をしっかりと意識してとらえ、自力で精一杯ゴールに向かいましょう。

『タイムマシンで戻った先の「過去」は自分にとっては「今」なのである。』というパラドックスがありますが本当に元に戻ってやり直すことはできません。

 「今」を大切に生きましょう。過去は変えることができませんが、今動けば未来が変わります。

(3)人生の残り時間は減る一方…決して増えることはない

誰もがそうですが、少なくとも「生まれてから今まで生きてきた分」だけ寿命が短くなっています。

言い換えれば「使った分だけ持ち時間が減っている」ことになります。

全部でどのくらい自分の持ち時間があるかは自分ではわかりませんが、確実に減り続けているのです。

たとえその日に何もしなくても全員が平等に減り続けるのですから、積極的に使った方が、そして同じ使うなら「楽しく」「有効に」使った方がよいわけです。

先ほどお話ししたように、少なくとも1日1440分の持ち時間は次の日には持ち越せないので、今日使うしかないのです。

それなのに今日何もしなくてよいのでしょうか。時間は物理的には増やすこともできませんし、未来にとっておくこともできないのです。

全体の長さはわかりませんが「命のろうそく」はどんどん燃えて短くなっていく一方です。

 だからといって、『自分の「命のろうそく」はあとどれくらい残っているのだろう』と毎日「うれいても」どうにもなりません。

また、自分の「命のろうそく」の長さ、つまり残りの寿命がわかってしまったら、そのことばかり気になってしまうでしょう。「どうせあと少しだから」とやる気がなくなってしまう人もいるでしょう。

 だからむしろ、わからない方が幸せなのかもしれません。

いずれにしても、確実に減り続けていることには違いないのですから、「今、そしてこれから」をどう生きるか、どう時間を使うかに着目した方がよいのではないでしょうか。決して増えることはありません。

(4)自分の時間はいつ終わるかわからない…だから真剣勝負

「自分の時間はいつ終わるのかわからない。」これもあたりまえのことです。もう少し細かく言えば、「自分が使える時間は生きている間だけ毎日平等に与えられている。そして生きていれば毎日支給される。でも、それがいつ終わってしまうのかは誰にもわからない。」ということです。ある日突然予告もなしに急に終わってしまうのです。

自分の時間が終わる瞬間、あるいは終わる直前に「やっぱりあれもしたかった、これもしたかった」「あれをやり残した」「やっておけばよかった」などと考えても悔やみきれません。走馬灯のようにあれこれ想いが巡るでしょう。ですから日々真剣に生きなければいけないのです。

じつは、私は生まれた時に、ほとんど仮死状態に近い状態でした。命が助かった時、家族や親類からは「儲けものの命」「二度授かった命」などと言われました。

私自身「この幸運にも与えられた大切な命」を真剣に生きたい、また大切に生きざるを得ないと考えています。

そして、せっかく拾った命なら、自分のためだけに使うのではなく、まわりの人も幸せになっていただきたいと思ってこの本を書いています。

仮に事故や病気で不自由していても、現在の生活が苦しくても、今使える時間があまりなくても「いつ終わるのかわからない命」を大切に使ってほしいと思います。

なぜなら、今私たちは生きていて毎日必ず1440分の時間が与えられる権利をもっているのですから。

(5)時間は伸び縮みする…心・身体・環境で時間の感じ方が変わる

アインシュタインやホーキング博士の理論の話をしているのではありません。

みなさんもよく経験することだと思いますが、自分の気持ちや置かれている状況によって、時間の感覚が伸び縮みし、「もうこんな時間」と感じたり、「まだこれだけしか経っていないのか」と感じたりすることがあります。これには諸説あり、様々な分野の研究者たちがいろいろな見解を出しています。

 たとえば、「時間への注目の仕方により、時間の流れの感じ方が変化する」「大人と子供の時間の感じ方は異なる」「病気のときは時間の流れがゆっくりしているように感じる」「命の危険にさらされているときはスローモーションのように感じる」「動物は身体の大きさにより呼吸や心拍の数が異なり、それにより時間の感じ方やまわりの動きの見え方、寿命が異なる」といったような研究がなされており、学会でも様々な角度から活発に議論されています。

経験的にもわかると思いますが、時間は自分が置かれた状況で「ものさし」自体が伸び縮みするので感じ方が変わるのです。忙しい時とゆとりがある時、朝と夜、平日と休日など、その状況により「ものさし」が変わったように感じ方が変化します。つまり主観的には時間は伸び縮みするものなのです。

そのことを理解していれば、それを逆手にとって気持ちや環境・状況を調整し、ゆとりある時間を過ごすことが可能となります。そして、準備、ダンドリ、手順などをうまくおこなうことにより、ある程度自分自身の時間の流れを自在にコントロールすることができるのです。

このようにあたりまえのような「時間の性質」をあらためて確認してみると、何か自分自身の中に少し見えてきたものがありませんか。そして、「時間を大切にしたい」という気持ちになってきませんか。

『人生を豊かに生きるための7つのトリセツ』セルバ出版 岩下敦哉著 より引用 

記事一覧(バックナンバー)