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ミスター定時の人生哲学

第二章 ミスター定時の人生哲学

【1】ミスター定時とは

 ここからは、「ミスター定時」についてお話しますので、興味・関心のある方は読み進めてください。

この本のタイトルにある「ミスター定時」には2つの意味があります。

1つは、「定時に帰る」ということ。もう1つは、「定時までにものごとを終わらせる」といういうことです。

1つ目の「定時に帰る」というのは、文字通り職場を定時に退出するという意味です。厳密に1分1秒たりとも…ということではなく、その時刻までに仕事を終わらせ、基本的に残業せずに退出するようにしています。

ですから、たまに私が職場に残っていると、「大丈夫ですか?」「何かとんでもないことでも起こったんですか?」と周りから言われます。

そのぐらい「ミスター定時」が浸透しています。

2つ目の「定時までにものごとを終わらせる」というのは、仕事に限らず、期限を決めてそれまでに必要十分な仕上がりでものごとを終わらせることや、会合や打ち合わせ、イベントなども予定通りに終わらせるようにしているということです。

私は公私共にいろいろなことに興味関心があり、やりたいこともたくさんあるので、こうしないと時間的にも精神的にもオーバーフローしてしまうのです。実は子どもの頃からすでにその傾向がありました。

あとの「ミスター定時の人生哲学」でもろもろお話します。

【2】なぜ定時なのか

 なぜ「定時」にこだわるかと言うと、次のような考え方がベースにあるからです。

1 期限に遅れた100点は評価なし、つまり0点以下である。

2 タスクや製品・商品において、必要十分以上のクオリティは自己満足でしかない。

3 人生最期の1時間を残業代と交換できるか。

 そして、「なぜ定時を大切にするのか」「定時に帰って何をするのか」については、次のように考えています。

【2】なぜ定時を大切にするのか

一言で言うなら、「定時を決めないと、ダラダラしてしまうから」です。

一般的に、時間があればあるほど仕事を終えるのが遅くなる、つまり、人間はあればあるだけ時間を費やしてしまう傾向があると言われています。

そこで、「定時」という締め切りを自分でつくってしまえば、必然的にそれまでに必要十分な仕事ができるようになるのです。

また、「締め切りに間に合わなかった100点」は「点数なし」、つまり「0点以下」である、

提出してこその点数であり、評価であると考えています。

そして、まずは定時、期限内で仕事を仕上げること、そして相手の求める仕上がりで過不足なく、必要十分に提出・納品することが大切であると考えています。

さらに、残業時間をあてにして仕事をしていると、結局残業しても仕事が終わらず、仕上がりも満足できるものにならないことが多いのではないでしょうか。

【3】定時に帰って何をするのか

「何をしてもいい、あえて何もしなくていい。」と私は思います。

「することがあるから帰る」ではなく「することがなくても帰る」そしてその時間ですることを決めればいいと思います。

やりたいこと、ずっとやりたかったこと、趣味、読書、ライフワーク、アクティビティ、人づきあい、創作、芸術、スポーツ、音楽、娯楽・・・やることはいくらでもあり、時間があればどんどんやりたいことが湧いてくるものです。

また、あえて何もしない、ゆったり、ゆっくり、のんびり過ごしたり、身体や心のメンテナンスしたり、「命の洗濯」をしたり、家族と楽しい時間を過ごしたり、様々な選択肢があります。

【4】ミスター定時の人生哲学(エッセンス)

それでは、ミスター定時の人生哲学をお話します。

「人生哲学」と言っても、大したことではないのですが、私が今までいろいろ考えてきたこと、大切にしてきたことなどを3つご紹介します。

1 人生においてやりたいことがたくさんあるが、それに対して時間が足りない、だから自分自身で選択する。

2 ワーク・ライフ・パーソナルバランスをとることが大切である。

3 ファミリーテーブルを大切にしたい。家族との時間は今しかない。

 これまで著書やホームページなどでこれらのことをお伝えしてきましたが、「ミスター定時」という私のライフスタイルの中で、とても大切な要素となっていますので、少し長くなりますがそれぞれ以下に引用します。

★「人生においてやりたいことがたくさんあるが、それに対して時間が足りない、だから自分自身で選択する。」

「人生やりたいことがたくさんある。いくら時間があっても足りない。だから定時を守ってそのやりたいことをやる。そして、好奇心には賞味期限があるので、やりたいと思ったことをそのタイミングで始めなければ、一生やれずに終わってしまい、結局後悔することになる可能性が高い。ならば、今、やることにしたい。経験として、やった後悔よりやらなかった後悔の方が深い傷となる。」という想いがあり、小冊子「クロノカイロス時間のすすめ」でこんなことを書きました。

クロノカイロス時間のすすめ

クロノス時間もカイロス時間もどちらも自分の中の時間なので、クロノス時間の側面の時は時間術などを使って、作業の負担を減らし、効率良くタスクをこなしていくこと、心の負担を減らし、なるべくストレスがかからないように工夫していくこと、カイロス時間の側面の時は、心理学などを使って心の充実感、満足感を増やして幸福感を感じられるように工夫すること、そして人生に「メリハリ」「やりがい」「ゆらぎ」「ゆとり」などができ全体として人生が豊かになるようにしていくのが良いと思います。

なぜ私がクロノカイロス時間をすすめるかというと、

①私たちの寿命は短い

私たちの寿命、つまり自分が持っている命の時間(持ち時間)は限られています。

80年とすれば、4,171週間、29,200日、700,800時間、42,048,000分、2,522,880,000秒です。

②命はいつ終わるかわからない

そして私たちの「命のろうそく」はいつ燃え尽きるかわからないということです。

寿命を全うする人、病気や事故で人生を終える人、命は続いているけれど、自由に思うような生き方をすることができない人などがいます。

③それに対してやることはたくさんある

現代人はいつも忙しい、というより忙しさを感じています。私は「ベルトコンベアで次々と運ばれてくる千手観音と百人組手をしているようなもの」と表現しています。

私たち現代人は、文明の進歩により、これまでにない便利で快適な暮らしを手に入れました。それなのに、何故か毎日、「時間のゆとり」や「心のゆとり」が持てない生活を送り、疲れ果てています。

「遠くまで安全・快適・迅速に移動できる交通手段」、「大量かつ迅速な物流による豊富な物資」、「24時間、365日休むことなく受けられる便利なサービス」、「一生かかっても消費しきれない娯楽やコンテンツ」、「地球全体にくまなく張り巡らされ、人々を瞬時につなぐ情報通信網」、「気候や天候、季節に関係なく活動できる快適環境」、「世界中、人類すべての叡智の記憶と高速大量情報処理」、「高度な医療技術や豊かな食生活に支えられる長寿健康社会」、昔の人々が夢や希望を描いてたどり着いた憧れの未来のはずだったのに・・・。

その原因は、「限りある自分の人生の持ち時間」に対して、「やること」「やりたいこと」「できること」が格段に増えてしまったことにあるのではないでしょうか。

④とても全部はできない

「やれることが多くなった」ということは、「やり切れないことが多くなった」ということです。

つまり、選択肢が増えて豊かになったはずなのに、充実感や満足感が得られにくくなったということであり、これは私たちにとって果たして幸せなことなのでしょうか。どんどん便利に、豊かに、楽しくなっていく一方で、充実感、満足感、幸福感がいつまでたっても得られない状態です。

現代人は「シーシュポスの岩」や「賽の河原の石積み」のように、「やることは永遠に終わらない」「全部やるだけの時間はない」「効率を上げても、量を増やしてもタスクは終わらない」「やればやっただけタスクは増える」「時間があればあるほどやるべきことが増える」という状況の中で、とても全部のことはできないのではないでしょうか。

⑤クロノス時間は時間術で、カイロス時間は心理学でさばく

2つの時間の特性に合わせ、それぞれに対し、クロノス時間は時間術で、カイロス時間は心理学でさばき、2つの時間のバランスをとるように調整しておきます。

⑥やることを選択し、やらないことを決める

やることすべてはできないので、やることをしぼり、自分で選択し、「やらないこと」を決めてしまいましょう。

⑦「タスクリスト」と「やりたいことリスト」

クロノス時間(時計の時間)はタスクリストをつくり、カイロス時間(心の時間)はやりたいことリストをつくり、「やること」と「持ち時間」の関係(比率)をある程度確定させてしまいましょう。

⑧時間と心にゆとりを持つ

全体の見通しやバランスがわかり、なんとなくおぼろげながら全体像が見えてくると時間にも心にもゆとりが出てきます。

⑨充実感、満足感、幸福感を持つ人生

適度なプレッシャーや負荷がやりがいや達成感、充実感をもたらし、頭の中を空っぽにして大好きなことに夢中になれたときに満足感が得られ、充実感や満足感で心がみたされたときに幸福感が生まれるので、そんな充実感、満足感、幸福感を持てる人生にしたいと思いませんか。

まとめると、人生には限りがあって、いつ終わるかわからない。そして、やることが多く、全部やり切ることはできない。だから、「やめて」「減らして」好きなことを自分で選んでやる。「時間のゆとり」「心のゆとり」をもって人生を楽しく幸福に生きたい。

そんな頭と心を整理するには、「クロノカイロス時間」という概念がぴったり合うので、そういう意味で、私はクロノカイロス時間という考え方や生き方をおすすめします。

もし共感していただけるのであれば、ぜひ、試してみていただければ幸いです。

★「ワーク・ライフ・パーソナルバランスをとることが大切である。」

「ワーク・ライフ・パーソナルバランス」という言葉は、私が独自に創った造語ですが、「人生を豊かに生きるための7つのトリセツ」という著書の中で、このようなことを書いてみました。

1.ワーク・ライフ・パーソナルバランス ― 「パーソナル」のすすめ ―

(1)ワーク・ライフ・パーソナルバランスとは

最近「ワーク・ライフバランス」という言葉をよく耳にします。

「仕事とプライベートのバランスが悪く、仕事中心になってしまっているので、仕事を早く終わらせ(切り上げ)、プライベートを充実させましょう」という流れ、考え方です。

これらのバランスが悪いと、心身ともに調子をくずしてしまいます。

そこで、私は生活を単に「ワーク(仕事)」と「ライフ(プライベート)」の2つに分けるだけではなく、そこに「パーソナル」という言葉・概念を入れてライフ・ワーク・パーソナルバランスと考えるようにしています。

要は「ワーク・ライフバランス」の「ライフ」の中には「家族・生活」と「個人・趣味」の2つの領域があるので、この「個人・趣味」の部分を「パーソナル」として分けて考えた方がうまく時間が使えると思うのです。

つまり「仕事時間」と「生活時間」という2つの時間のほかに、私たちが子どもの頃から持っている「個人の時間」「自分だけの時間」というものがあり、一人で好きなことをやったり、のんびりと息抜きをしたり、じつは私たちにはそういった時間がとても大切なのです。

逆にこの「パーソナル」を入れて考えないと「時間術」というもの自体も破たんしてしまいます。

そういう意味で私は「ワーク・ライフ・パーソナルバランス」という考え方を提唱しています。

(2)なぜ「ライフ」と「パーソナル」が大切なのか

「あらためて説明する必要はない」と言われるかもしれませんが、実際に今、私たちの生活は「ワーク」中心になってはいませんか。

 また「朝時間」も「アフター5」も「休日」も、頭の中は1日中「ワーク」だらけということはありませんか。

 そして「でも仕事だから仕方ない」「仕事が優先だから」と自分自身に言い聞かせていませんか。

 子どもの頃を想い出してみてください。私たちの中には、はじめは「パーソナル」な世界しかありませんでした。

 「ものごころ」がついてしばらくの間、毎日自分の世界で好きなことをして、楽しく遊んでいました。母親も自分中心に動いてくれるし、お友だちと遊んでいても自分の好きなことをしていられました。

とても楽しくてあたたかい、まさに「パーソナル」な世界です。

そのうち、家族それぞれに用事や人格があることを知ったり、家族でお出かけをしたり、「父の日」「母の日」「敬老の日」「お誕生日」などお互いに感謝したり、祝ったり、プレゼントをしたりするようになり、家族との関わり、つまり「ライフ」の世界を意識するようになりました。

 そして、小学生ぐらいになると、学校の勉強や習い事など、1日や1週間の予定、時間割、スケジュール(アポイント)とともにさまざまな課題(やること・タスク)が出てきます。

 この辺から私たちは少しずつ「アポイント」や「タスク」とつき合うようになるのです。つまり「ワーク」の世界に入ってくるのです。

 やがて成長し大人になると、いつの間にか「ワーク」中心の生活となり、相対的にどんどん「ライフ」と「パーソナル」の時間が小さくなってしまいます。

 時々「子どもの頃はよかったなぁ」とか「もう一度子どもの頃に戻りたいなぁ」などと思うことはありませんか。それはきっと「ワーク」の部分が大きくなりすぎて、心が疲れているのです。「本当の自分」が悲鳴をあげているのかもしれません。

 もしそうならば、(本当に子どもの頃に戻ることはできませんが、)少し「ライフ」や「パーソナル」の時間を増やして、「本当の自分」を取り戻してみてはいかがでしょうか。

 そのためにこれからいろいろお話ししていきますが、それはすべて「本当の自分がしたいと想うことをするためへの道のり」だと思ってください。

 「ワーク」の世界の「重たい鎧」を脱ぎ捨てて、「本当の自分の心」に近づいていくととてもあたたかく、リラックスしたやさしい世界が待っています。少しでも多くそんな時間がほしいと思いませんか。

 「本当の自分」「等身大の自分」は、じつは「ライフ」や「パーソナル」の中にいるのです。特に「パーソナル」の世界は「素直で」「純粋で」「天真爛漫で」「我がままな(あるがままの)」自分の世界です。「気楽で」「ほっとする」あたたかい世界です。人生の中でもしこの世界がなければ、自分が自分でなくなってしまいます。本当の自分はそこにいるのです。  

ですから「ライフ」と「パーソナル」は大切なのです。今こそ「ライフ」と「パーソナル」の時間を増やし、本当の自分を取り戻しましょう。

(3)ワーク・ライフ・パーソナルバランスがとれないと、ゆとりがなく、楽しくない

私たちは人生において、「仕事人」「家庭人」「個人」という3つのキャラクターを同時に持っています。「3つの時間」のどれも自分の時間です。その3つがうまくバランスがとれていると豊かで幸せな時間を過ごせるのですが、現代の私たちはなかなかバランスがとれていないのが現状ではないでしょうか。

バランスが悪い原因はずばり「やることが多い」ということです。そしてその「やること」大半は「ワーク」(タスク)なのです。

ほとんどの人が一日の中で「ワーク」(仕事)の部分が大きくなりすぎてしまった生活をしています。このためいつも時間に追われ、時間不足(実際は「時間不足感」)にさいなまれています。「ワーク」が大きくなりすぎると、それに押しつぶされて「何のために働くのか」「何でここまでして働かなければいけないのか」と考えてしまいがちです。

この対処法として、唯一効果があるのは、ワーク・ライフ・パーソナルバランスをとるために「ワーク」の比率を下げることです。その中でも特に「タスク」を減らすことが不可欠です。

ほとんどの人が自分の時間の中に「もうこれ以上詰め込めない状態」なのに、「ワーク」の比率をさげることをせずに、そこに「ライフ」や「パーソナル」を無理やりつめ込もうとするから失敗するのです。全体の総量を見てとにかくまず「ワーク」を減らしましょう。

ビジネスマンだけではありません、自営業、専業家庭人、経営者、在宅ワーカーなどを考えてみてください。「自宅」が「職場」になっている場合、「ワーク」と「ライフ」、「パーソナル」の線引きが難しくなり、どの時間が「ワーク」なのかわからなくなることがあります。

仕事が忙しければますますその傾向が強くなり「ワーク」の比率が高くなりがちです。そして「ワーク」が大きくなりすぎて「ライフ」や「パーソナル」がほとんどない状態になることがあります。

ですから「ワーク」を減らし、逆にプライベートを充実させると、人生や生活に「ゆとり」や「メリハリ」ができます。プライベートの中には、「ライフ」と「パーソナル」の部分があるので、それぞれを充実させることが大切です。「パーソナル」まで充実してくると人生がとても楽しくなります。アクティブに活動したり、「ゆとりの時間」を持ったりしましょう。そして、その中でも特に「ゆとり」の時間は大切です。

「リラックス」や「いやし」「あえて何もしない時間」は「至福の時」ですから意識的に持つようにするとよいと思います。私は「音楽」「コーヒー」「散歩」などの時間を持つようにしています。つまり「パーソナル」自体にも「ONとOFF」のバランスが必要なのです。

ですから「バランス」と「ONとOFF」の両方を考えてみるとうまくいくと思います。

「ワーク(仕事)」「ライフ(家族)」「パーソナル(個人)」というバランスがとれてこその人生です。そして、「ゆとりを持つ」さらに「楽しく過ごす」というハイレベルなことができるようになれば、一人前の「時間使い」です。あなたもぜひそうなってください。

★「ファミリーテーブルを大切にしたい。家族との時間は今しかない。」

3つ目ですが、私はファミリーテーブルを大切にするようにしています。それは、家族との時間は今しかないからです。これも「人生を豊かに生きるための7つのトリセツ」の中で書いていますので、一部引用します。

 

なぜ私が家族との時間にこだわるのか、それは「今」しかないからです。

 人それぞれいろいろな考え方がありますので、軽い気持ちで聞いてください。

 人は生まれてから日々成長し、歳を重ねていきます。

 生まれたばかりの赤ちゃんから、幼児、子ども、少年、青年、大人、親、そして老人となるまで毎日少しずつ歳を重ねていきます。

 「またあたりまえのことを言っている」と思うかもしれませんが、じつはこれは「すごいこと」なのです。

 人が毎日歳を重ねながら生き続けていくこと自体「すごいこと」なのですが、それ以上に、「家族として出会い」「共に暮らし」「同じ時を過ごしていること」がすごいのです。

 自分はたまたま両親のもとに生を受け、大切に育てられ、兄弟姉妹がいる人はまたそこで出会い、大人になって一生のパートナーと家族になる約束をします。そしてそこに子どもが生まれ、自分は親となり子どもを育てていきます。自分の両親やパートナーの両親は祖父母となり一緒に子どもを育てます。

 たまたま「ある時」「ある家」に生まれ、家族と出会い、一緒の時を過ごすのです。なんて運命的な出会いなのでしょうか。そして日々の楽しみ、悲しみ、苦しみ、喜びなどを共有し、同じ時間と空間を過ごすのです。このことだけでも「すごいこと」だと思いませんか。

 ですから、まずこの運命的な出会いを大切にしましょう。

 また、その家族も刻一刻と歳を重ねているのです。同じ日は二度とありません。子どもはすぐに大きくなります。大人は「あっという間」に歳をとります。つまり家族の時間には「今」しかないのです。

 たとえば子どもが小さいときはみんな一緒に旅行に行っていたけれど、大きくなったら、勉強や習い事、クラブ活動や友人との約束などの予定が入り、なかなかみんなの予定が合わないということはよくあります。とにかく「今」を楽しむしかないのです。それこそ「ワンチャンス」だと思ってください。

 また、自分が子どもの頃や若い頃反発していた両親が歳をとり、「老い」を感じるようになったとき、自分も子育ての真っ最中でしょう。子育てをしてみて、本当にはじめて親のありがたみがわかります。そして感謝の気持ちとともに、これから先、自分が両親に何をしてあげられるかを考えるのです。

 そう思ったら、そのときすぐに動かなければなりません。電話1本、手紙やメール1通でよいのです。「今何してた」「元気にしてる」「今日何食べた」だけでもよいのです。「今、つながる」ことが家族には大事なのです。

 過ぎてしまった時間は戻ってきませんが、家族との「今」を積み重ねていった結果が「想い出」になるのです。

 ですから「今」を積み重ねていかなかった家族には「想い出」がありません。家族の「今」を1ページずつ積み重ねていくと「家族の想い出の本」ができあがります。そう考えると、白紙のページを重ねたくないですよね。

 もう一度言います。家族の時間には「今」しかありません。そう心に刻んで家族一人ひとりの顔を見つめて「にっこり」してみてください。きっと幸せを感じます。

という「ミスター定時のダンドリ時間術」の基礎となる3つの「人生哲学」をご紹介しましたが、何か参考になることがあれば幸いです。

 『ミスター定時のダンドリ時間術』岩下敦哉著 より引用

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