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ワーク・ライフ・パーソナルバランス ― 「パーソナル」のすすめ ―

1.ワーク・ライフ・パーソナルバランス ― 「パーソナル」のすすめ ―

(1)ワーク・ライフ・パーソナルバランスとは

最近「ワーク・ライフバランス」という言葉をよく耳にします。

「仕事とプライベートのバランスが悪く、仕事中心になってしまっているので、仕事を早く終わらせ(切り上げ)、プライベートを充実させましょう」という流れ、考え方です。

これらのバランスが悪いと、心身ともに調子をくずしてしまいます。

そこで、私は生活を単に「ワーク(仕事)」と「ライフ(プライベート)」の2つに分けるだけではなく、そこに「パーソナル」という言葉・概念を入れてライフ・ワーク・パーソナルバランスと考えるようにしています。

要は「ワーク・ライフバランス」の「ライフ」の中には「家族・生活」と「個人・趣味」の2つの領域があるので、この「個人・趣味」の部分を「パーソナル」として分けて考えた方がうまく時間が使えると思うのです。

つまり「仕事時間」と「生活時間」という2つの時間のほかに、私たちが子どもの頃から持っている「個人の時間」「自分だけの時間」というものがあり、一人で好きなことをやったり、のんびりと息抜きをしたり、じつは私たちにはそういった時間がとても大切なのです。

逆にこの「パーソナル」を入れて考えないと「時間術」というもの自体も破たんしてしまいます。

そういう意味で私は「ワーク・ライフ・パーソナルバランス」という考え方を提唱しています。

(2)なぜ「ライフ」と「パーソナル」が大切なのか

「あらためて説明する必要はない」と言われるかもしれませんが、実際に今、私たちの生活は「ワーク」中心になってはいませんか。

 また「朝時間」も「アフター5」も「休日」も、頭の中は1日中「ワーク」だらけということはありませんか。

 そして「でも仕事だから仕方ない」「仕事が優先だから」と自分自身に言い聞かせていませんか。

 子どもの頃を想い出してみてください。私たちの中には、はじめは「パーソナル」な世界しかありませんでした。

 「ものごころ」がついてしばらくの間、毎日自分の世界で好きなことをして、楽しく遊んでいました。母親も自分中心に動いてくれるし、お友だちと遊んでいても自分の好きなことをしていられました。

とても楽しくてあたたかい、まさに「パーソナル」な世界です。

そのうち、家族それぞれに用事や人格があることを知ったり、家族でお出かけをしたり、「父の日」「母の日」「敬老の日」「お誕生日」などお互いに感謝したり、祝ったり、プレゼントをしたりするようになり、家族との関わり、つまり「ライフ」の世界を意識するようになりました。

 そして、小学生ぐらいになると、学校の勉強や習い事など、1日や1週間の予定、時間割、スケジュール(アポイント)とともにさまざまな課題(やること・タスク)が出てきます。

 この辺から私たちは少しずつ「アポイント」や「タスク」とつき合うようになるのです。つまり「ワーク」の世界に入ってくるのです。

 やがて成長し大人になると、いつの間にか「ワーク」中心の生活となり、相対的にどんどん「ライフ」と「パーソナル」の時間が小さくなってしまいます。

 時々「子どもの頃はよかったなぁ」とか「もう一度子どもの頃に戻りたいなぁ」などと思うことはありませんか。それはきっと「ワーク」の部分が大きくなりすぎて、心が疲れているのです。「本当の自分」が悲鳴をあげているのかもしれません。

 もしそうならば、(本当に子どもの頃に戻ることはできませんが、)少し「ライフ」や「パーソナル」の時間を増やして、「本当の自分」を取り戻してみてはいかがでしょうか。

 そのためにこれからいろいろお話ししていきますが、それはすべて「本当の自分がしたいと想うことをするためへの道のり」だと思ってください。

 「ワーク」の世界の「重たい鎧」を脱ぎ捨てて、「本当の自分の心」に近づいていくととてもあたたかく、リラックスしたやさしい世界が待っています。少しでも多くそんな時間がほしいと思いませんか。

 「本当の自分」「等身大の自分」は、じつは「ライフ」や「パーソナル」の中にいるのです。特に「パーソナル」の世界は「素直で」「純粋で」「天真爛漫で」「我がままな(あるがままの)」自分の世界です。「気楽で」「ほっとする」あたたかい世界です。人生の中でもしこの世界がなければ、自分が自分でなくなってしまいます。本当の自分はそこにいるのです。ですから「ライフ」と「パーソナル」は大切なのです。今こそ「ライフ」と「パーソナル」の時間を増やし、本当の自分を取り戻しましょう。

(3)ワーク・ライフ・パーソナルバランスがとれないと、ゆとりがなく、楽しくない

私たちは人生において、「仕事人」「家庭人」「個人」という3つのキャラクターを同時に持っています。「3つの時間」のどれも自分の時間です。その3つがうまくバランスがとれていると豊かで幸せな時間を過ごせるのですが、現代の私たちはなかなかバランスがとれていないのが現状ではないでしょうか。

バランスが悪い原因はずばり「やることが多い」ということです。そしてその「やること」大半は「ワーク」(タスク)なのです。

ほとんどの人が一日の中で「ワーク」(仕事)の部分が大きくなりすぎてしまった生活をしています。このためいつも時間に追われ、時間不足(実際は「時間不足感」)にさいなまれています。「ワーク」が大きくなりすぎると、それに押しつぶされて「何のために働くのか」「何でここまでして働かなければいけないのか」と考えてしまいがちです。

この対処法として、唯一効果があるのは、ワーク・ライフ・パーソナルバランスをとるために「ワーク」の比率を下げることです。その中でも特に「タスク」を減らすことが不可欠です。

ほとんどの人が自分の時間の中に「もうこれ以上詰め込めない状態」なのに、「ワーク」の比率をさげることをせずに、そこに「ライフ」や「パーソナル」を無理やりつめ込もうとするから失敗するのです。全体の総量を見てとにかくまず「ワーク」を減らしましょう。

ビジネスマンだけではありません、自営業、専業家庭人、経営者、在宅ワーカーなどを考えてみてください。「自宅」が「職場」になっている場合、「ワーク」と「ライフ」、「パーソナル」の線引きが難しくなり、どの時間が「ワーク」なのかわからなくなることがあります。

仕事が忙しければますますその傾向が強くなり「ワーク」の比率が高くなりがちです。そして「ワーク」が大きくなりすぎて「ライフ」や「パーソナル」がほとんどない状態になることがあります。

ですから「ワーク」を減らし、逆にプライベートを充実させると、人生や生活に「ゆとり」や「メリハリ」ができます。プライベートの中には、「ライフ」と「パーソナル」の部分があるので、それぞれを充実させることが大切です。「パーソナル」まで充実してくると人生がとても楽しくなります。アクティブに活動したり、「ゆとりの時間」を持ったりしましょう。そして、その中でも特に「ゆとり」の時間は大切です。

「リラックス」や「いやし」「あえて何もしない時間」は「至福の時」ですから意識的に持つようにするとよいと思います。私は「音楽」「コーヒー」「散歩」などの時間を持つようにしています。つまり「パーソナル」自体にも「ONとOFF」のバランスが必要なのです。

ですから「バランス」と「ONとOFF」の両方を考えてみるとうまくいくと思います。

「ワーク(仕事)」「ライフ(家族)」「パーソナル(個人)」というバランスがとれてこその人生です。そして、「ゆとりを持つ」さらに「楽しく過ごす」というハイレベルなことができるようになれば、一人前の「時間使い」です。あなたもぜひそうなってください。

『人生を豊かに生きるための7つのトリセツ』セルバ出版 岩下敦哉著 より引用 

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